Webサイトの積極的な活用による独自の戦略で集客を進めている引越し会社、株式会社ムーバーズは、学生のアルバイトを積極的に受け入れる方針です。 一方、芦田宏直様は2012年に引越しをされ、その際、引越し業者としてムービングエス(株式会社ムーバーズ)をご利用になりました。 実際にムーバーズの引越し現場をご覧になった芦田様のご厚意により、ムーバーズで働くということをテーマに、弊社 代表取締役 今井聡が対談の機会をいただきました。

芦田宏直(アシダヒロナオ)今井聡(イマイサトシ)
早稲田大学大学院文学研究科前期・後期博士課程満期退学(哲学、現代思想専攻)後、法政大学 (倫理学)、立正大学(哲学)、京都短期大学(社会学)、東京立正女子短期大学(哲学・ドイツ語)の講師を経て、学校法人小山学園・テラハウスキャリア開発研究所所長、学校法人小山学園理事・東京工科専門学校校長(2002~2008年)、インターネット教育協議会理事(2000~2004年)、全国専門学校情報教育協会常任理事(2007年~)、2000年度労働省「IT化に対応した職業能力開発研究会」委員、2003年度経済産業省「産業界から見た大学の人材育成評価に関する調査研究」委員、2004~2007年度文科省「特色ある大学教育支援プログラム」審査部会委員、2008年度文科省「質の高い大学教育推進プログラム」審査部会委員などを歴任。現在、岡﨑学園理事(2011年~)、人間環境大学・副学長(2012年~)、東海大学教授(2009年~)、河原学園・副学園長(2009年~)、辻調理専門学校グループ顧問(2009年~)、上田安子服飾専門学校顧問(2009年~)。大学教育、専門学校教育双方の弱み強みを踏まえたFD(Faculty Development)が専門分野。その他、社会人カリキュラム開発にも強い。「自己点検・評価」「授業評価」に関わる講演・論文多数。著作に『書物の時間』(行路社 1988)、翻訳『還元と贈与』(行路社 1994)などがある。 前 株式会社ムーバーズ 代表取締役
大手引越し会社で引越し業務を経験後、2000年に独立。横浜を拠点とする「引越しのムービングエス」を創業。
2006年、株式会社ムービングエスとして株式会社化した後、2011年、同じく横浜を中心に10年以上の実績を持つ「ジュンムービング」と合併。2012年には社名を「株式会社ムーバーズ」に変更し、今に至る。
引越し作業の質、スタッフの質へのこだわりをお客様に知って頂くため、自社Webサイトで積極的に「引越し事例集」を紹介するなど、広告や引越し一括見積もりサイトに依存せず、自社Webサイトによる集客に重点を置く独自の戦略を貫いている。最近ではFacebookにおいても日々の業務の様子を紹介しており、こうした取組みを自らが先頭に立って積極的に推進している。
GoogleMapsやiPadなどのツールをいち早く活用することや、引越しで消費するダンボールの数に応じて中国の内蒙古自治区ホルチン砂漠における植樹活動に寄付するといったユニークな活動でも知られており、インターネット、雑誌、ラジオ、TV等、各種メディアで紹介されることが少なくない。


(以下、敬称略)

引越しは力仕事ではなく、いかに効率良く物事を進めることができるか、が重要。

【今井】本日はお時間をいただきありがとうございます。

【芦田】まず、どのような理由から対談を希望されたか、改めて説明をお願いします。

【今井】従来、引越し作業のイメージというと「力仕事」でしたが、近年は重い家具をお持ちのお客様が減少しています。核家族化が進み、単身者も多い都市部でこの傾向が顕著です。このような背景もあり、力仕事の側面は一般の方が思うほど重要ではありません。
「引越しの段取り」等についてしっかり考えることのできる学生の方に、もっとアルバイトに来て欲しい、そのためにも「引越しは力仕事だけではない」、「知識や考え方も重要」であることを多くの人に知ってもらいたいという思いが強くあります。
そうしたなか、ふと拝見した
「引っ越しというのは、いろいろな要素を含んでいるから、なかなか勉強になるのだ。」
「私の引っ越しを手伝うのが、一番のキャリア教育になると思う。」
という芦田先生のTweetに注目しました。
このようなTweetをされた理由を伺いたかった、というのが、対談をお願いした一番の理由です。

【芦田】引越しには「効率や全体を考えて物事を進めることができるか」ということがよく見える、と感じたのです。
たとえば「頭のいい」真面目な人なら「このようにしっかり梱包して下さい」と伝えれば、しっかり梱包してくれます。しかし、全ての荷物に時間と手間をかけていては時間も梱包資材も過剰に消費してしまいます。

【今井】確かにそうです。

【芦田】今回自分でも多くの知人に手伝ってもらいながら引越しをしましたが、「ものをどこに、どのように入れるか」といった気遣いができる人なのかどうかが見えると感じました。「丁寧に」とお願いすると、あまり重要でないものまで丁寧にしっかり梱包してくれるかと思えば「自分だけで判断せず、確認した方が良いこと」を自分だけで判断してしまうという人もいます。出来ない人ほど勝手に判断することが多い。
「何を、誰に、聞くべきか。自分でどこまで判断すべきか」、「何分でこの仕事なら終えればいいのか」など、引越しには多くの作業課題が存在すると思ったわけです。

【今井】確かに引越しの現場ではそうした違いが出ますが、どのような理由で差が出るのか、うまく説明できません。

「デザイン力」が培われる。

【芦田】方程式に例えるなら一次方程式ではなく、さまざまな要素を考慮して連立方程式を解く能力。もっと別の表現をするなら一つ一つの仕事に対する「デザイン力」が重要なのではないでしょうか。全体をデザインしないと一つ一つのことが出来ないという意味です。
引越しを効率良く行おうとすれば、自然とこの「デザイン力」が培われるように思います。

【今井】よくわかります。弊社が重視する質の高い引越しサービスを提供するには、確かに芦田先生の仰る「デザイン力」が重要です。本来でしたらデザイン力をシステマティックに学べる仕組みや教材のようなものがあると良い、とも考えていますが、現状では経験を積んでもらうしかありません。
ムーバーズでのアルバイトを通じ、このデザイン力を身につけることの楽しさを、学生の方にも是非体験していただきたいと思います。

「気づき」のあるムーバーズの引越し現場。

【芦田】常々、サービス業におけるものの考え方と偏差値の間に関係があるように感じています。
学生のアルバイトを見ていて、通っている学校によって引越し作業スタッフとしての質に差を感じませんか?

【今井】高卒の人よりもいわゆる六大学の学生の方が、全体の流れのなかで何が重要かということによく気づく、という傾向はあると思います。必ずしも学校や偏差値にリンクしているか、正直なところわかりませんが、何らかの差は感じます。
たとえば弊社ではスタッフに対して、まず常識的な、当たり前のことを教えます。当たり前のこともできない方がどうしてもいるからです。考えてみると、偏差値の高い学生は当たり前のことができる確率が高いようです。そうした方は「お客様は何を目的に引越しをされるのだろう」ということまで考える力も備えているように感じます。
こうしたことを考えながら作業できる人と、ひたすら荷物を運ぶことしか考えない人とでは、お客様に対しての行動にも差が出ます。
今申し上げた「考える力」は、さきほどの「デザイン力」にも関係すると思います。

【芦田】今後学生のアルバイトを増やすには重要な要素があると思います。
引越し作業をやらせれば、その学生が仕事が出来るかできないかすぐわかります。それは力仕事の優劣ではなくて、いわゆる“段取り”能力の優劣というものです。それは一つの作業の段取りだけではなく、作業に従事するスタッフや顧客の動きに対する反応、作業全体の進捗に対する反応など引越し作業全体に対する段取り意識を意味しています。だからそれは「デザイン力」なんです。これは学生が「試験問題を解く」ことを繰り返しているだけではなかなか身につかない能力です。
単純作業だけでは、大学生にこのアルバイトに興味を持ってもらうことは難しいのではないでしょうか。
「引越し作業にはこんなノウハウが必要なのか」または「引越しを効率良く進めるにはこんなことを考える必要がるのか」といった課題を提示してあげれば、学生自身も成長できるので、アルバイトをするメリットがあります。
この業界は、元気だ、素直だ、活動的だ、順応性が高いなどといった抽象的な人材像+経験主義でながくやってきていることもあるかと思います。それでは大学生は来ない(笑)。

【今井】成長を楽しみながら仕事をしていただきたいと考えています。そして身につけた「デザイン力」を、社会人になったときに少しでも役立てていただければ、と思います。
そういう意味ですと、弊社はWebサイト「moving-s.com」にも明記しているとおり、「現場スタッフにこだわる」引越し会社です。さまざまな要素を考慮した上で「段取り」を考えることのできるスタッフがそろっているので、「気づき」のある面白い職場ではないかと自負しています。

引越し作業の質を客観的に評価できる仕組みの重要性。

【芦田】私の引越しでは代表の今井さんを初めとする優秀なスタッフの作業を見ることができました(※1)が、他のスタッフが段取り良く引越しを行えているか、という点はどのように評価していますか?

※1 芦田様の引越しでは、旧居のマンション管理事務所の方から、「作業、態度がとても良かった。今までの大手の業者のどこよりも良かった」とお褒めの言葉をいただきました。

【今井】お客様にアンケートにご協力いただき、作業に問題がなかったか、といった点を常に意識しています。

【芦田】それだけでは良くないと思います。
お客様だって様々な水準があるからです。この業界でアンケート主義に安住すると「ばれなきゃいい」という考え方が蔓延します。スタッフ指導ではそれが一番まずい。
まず第一に、社内基準によりスタッフの作業をしっかりとチェックし、「自分達としてはしっかり引越しを遂行できた」、という状態になって初めて、「お客様には満足していただけたのか」という観点で振り返るというのが順序ではないでしょうか。
社内基準の方が厳しい場合もあるし、お客様の要求の方が厳しい場合もある。後者の要求が社内基準の向上に繋がる。そうやってスタッフの水準が上がっていく。
一般的にサービスの利用者はあまり悪いことを言ってきてくれません。不満があれば次は利用しないだけなので、お客様からのアンケートの結果が良かったことだけで安心するのは危険なのです。

【今井】そうですね。現在そうしたチェックのための仕組み作りに取り組んでいます。

【芦田】梱包の仕方や養生の仕方などについて、コスト面、作業面双方を含んだ初級・中級・上級など度をつけたチェック事項を整えていますか?また会社としてやるべき作業の内容や質の諸段階を明確にしていますか?

【今井】自社のWebサイトを通じてお客様に弊社のサービスを理解していただくようにしています。
なかでも「引越し事例集」というものがあり、そこでは弊社がどのような作業を行なっているのか、写真付きで紹介しています。これをご覧になってお問い合せ下さる方が少なくありません。

【芦田】今回、自分自身が引越しを経験しましたが、たとえば用意してもらったガムテープが途中で足りなくなりましたよね。あれは梱包を手伝ってくれた私の知人があまり深く考えずに使ったため、プロが想定したよりはるかに多いガムテープを消費してしまったということですよね。

【今井】そういうことになると思います。

【芦田】では一箱あたりどの程度のガムテープを使うはずである、または、箱のどこからどこまでにテープを貼るべきである、といった基準を社内では設けていますか?
また梱包は梱包にとどまらず、開梱でもあるわけです。箱や荷物を崩さず、かつ開けやすい荷造りとはどうあるべきか? 丁寧かそうでないかなどという問題ではないのです。
そうした細かい点まで規定すると、より効率の良い引越し作業を実現できるのではないでしょうか。そういったノウハウがどのように初級・中級・上級と度量化されているのか? 毎回そういった速度とコストを計測し、自分たちの引っ越し作業に点数を付けていくことが重要。引っ越しをやるたびにその点数を上げていかないと。「顧客満足」はその結果に過ぎない。儲からないと質の高い仕事へのステップも始まらないのですから。

【今井】現時点ではそれほど細かい点まで規定していませんが、今後基準を明確にし、芦田先生が先ほど仰ったように、実際に基準が守られているかチェックできるシステムにしていくことは重要です。
スタッフにも目的や重要性をしっかり説明し、実効的なものにしていきたいと思います。

明確な作業標準を用意し、教材として活用。

【芦田】ガムテープのこと以外にも、「この作業にはどのような基準が設けられているだろうか」と想像することが多数ありました。たとえばマンションの入り口を養生する際、「このチェックリストに従えば誰でも同じ様に養生できる」といったレベルのチェックリストを想定する必要があります。
いつも思うのですが、マンション玄関とエレベータ出入り口の養生は両サイドだけ。なぜ上側の淵に養生しないのか。不思議に思っていました。上部の淵には結構キズが残るのです。ベッドやダイニングテーブルなど大きなものを移動するときには特に。お客の方も、作業前の養生の仕方を見て、その業者の仕事の質をチェックしたりしているわけです。
作業標準を細かく、かつ有意味に規定すればするほど、「誰でも同じ品質の引越しサービスを行える」ようになりますし、アルバイトの教材としても使えるのでないですか? 引っ越しは作業ではなくて、〈システム〉であり、〈デザイン〉なのだと。

【今井】そうですね。大手の引越し会社を含め、どの引越し会社でもアルバイトに現場スタッフとして働いてもらいます。ですが、社員教育に力を入れている会社はあっても、アルバイトの教育まで考えた作業標準を用意しているケースは無いと思います。
弊社も芦田先生が想像されているほど細かい基準は用意していなかったので、今後是非そうした作業標準の策定と徹底を進めたいと思います。

引越し業界の偏差値向上を目指すムーバーズでのアルバイトは学生のためにもなる。

【芦田】そうした取組みを進めると、「引越し業界の偏差値の向上」にもつながると思います。
実は私は「職業教育の東大を作りたい」と考えています。
残念ながら多くの専門学校は「偏差値が低く、大学に行けなかった人が行く」という側面がありますが、そうではなく、偏差値の高い人にとっても多くの気づきがある、高度教育としての職業教育があってしかるべきと考えています。
そうした高度教育が存在し、かつ、その仕事のキャリアパスを考えたときに「このようになりたい」と尊敬できる先輩の居る業界でなければ、優秀な学生は職場として興味を持ってくれないのではないでしょうか。 「いい人」だけが出世する職場では、大学生は寄りつきません。「いい人」なんていくらでもいるのだから。

【今井】よくわかります。

【芦田】経験だけがものを言うのではなく、勉強して初めて身につく要素がなければ、偏差値の高い学生は引越し業界に注目しないでしょう。

【今井】芦田先生の仰る「業界の偏差値向上」と、そのための教材につながるお話は大変参考になりました。詳細な作業標準を策定し、チェックリスト等によりそれを徹底させるシステムを作り上げていくことは、引越し業界のイメージも変えていく取組みになると思います。
全国展開(※2)のためにはサービス品質の維持が欠かせませんので、その点でも役立ちます。
是非この取組みを進め、引越し業界の偏差値向上に貢献してまいります。

学生の方には、ムーバーズでのアルバイトを有効に活用していただれば、と思います。
本日はありがとうございました。

※2 株式会社ムーバーズは、各都道府県の優秀な中小引越し会社と提携し、全ての都道府県で引越しを受注できる体制作りを目指しています。

学生の皆様へ

大手を含む多くの引越し会社が、現場スタッフとしてアルバイトを雇用していますが、なかでも株式会社ムーバーズは「現場スタッフにこだわる」をモットーにしており、アルバイトであっても質の高い引越しサービスを提供できるよう、しっかり指導いたします。

引越し業界に対しては無骨というイメージもあるかもしれませんが、引越しはお客様と接することも多いサービス業です。
弊社事務所は住宅地に隣接しているため、トラック整備の様子などがご近所からも見えます。また、事務所周囲の清掃活動を行なっているのですが、こうしたことをご覧になっている近隣のお客様から、「この会社なら」ということで引越しをお任せいただくことが増えています。
このような体験からも、普段から誰に見られても恥ずかしくない行動を心がけることの重要さを理解してもらえると考えています。

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